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空は青くて、桜はピンクで、「緊急事態宣言」などという物々しい字面とはまったく不釣り合いな景色。
私が暮らす町は、今がいちばん綺麗なとき。


「買い物だったらいいですよ。散歩はどうぞしてください」と、そんな言葉を存分に掬い取って、「だからオマエ、ちょっと駅のほうまで歩いていこうよ。ちょうど桜も咲いてるよ」などと、高齢の夫婦が町を歩く。

「散歩がてら買い物に行こうよ」と、ベビーカーを押した若い夫婦が駅方面に向かって歩く。

テレビで流すのは、人の姿が消えた渋谷や新宿の街の姿。
でもオフィス街の通勤時は相変わらずの人の波。

案外盲点なのが、飲食店などがまあまあ揃ってる、そこそこ栄えてる町、なんだと思う。

だって地元の駅周辺、いつもと少しも変わらない人出ですから。
ミスドに人が並んでドーナツ買ってますから。
ヴァイオリン背負った乙女が歩いてますから。
タリーズだって、入り口のドア開けて営業してますから(さすがに人はいなかった)。
マスクもしてない暇そうなおっちゃんが、自転車でグルグルしてますから。


「ドトールは休みだったけど、モリバコーヒーはやってた。でもさすがに空いてたし、長居してる愚か者はボクだけだよ」
と、自称愚か者の息子は、先ほど電話で私に語った。
でも「昨日はモリバコーヒー、満席だった」らしい。


昨日一昨日と、きっとスーパーも混んでるだろうからと、二日間私は家に籠っていた。
マンション1階の郵便ポストまで下りただけだ。
腰痛が悪化したせいもある。

しかしさすがにこれでは筋力が落ちる。気分も萎える。
そうだ、駅前の桜を観に行こう。そして駅近スーパーで軽く買い物して帰ろうと出かけたのだった。

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要するに多くの人が、私と同じような発想で家を出ているのである。
もちろん、許容範囲の行動ではある。

ただ、やはり中途半端に店が開いている以上、人は町に出かけるし、人の姿を見かければ何となく安心して、緊張感はすぐに緩むらしいと、そういうことだ。

自分に厳しい人がいるのと同様、自分に優しい(あるいは甘い)人も多いのが世の中である。